<和訳>
The Journal of the Alliance of Registered Homeopaths(ARH;英国認定ホメオパス連合ジャーナル)
“Homeopathy in practice”(実践におけるホメオパシー) 2009年秋号掲載記事
※英国を代表するホメオパシー職業団体の1つ、ARHの2009年ジャーナル秋号に掲載されたARH会長の「Swine flu :An overview」から許可を得、和訳し掲載。
(和訳:ロイヤル・アカデミー・オブ・ホメオパシー)
「豚インフルエンザとその概要」ARH会長 カリン・モント氏
■誇大表現(The hype)
豚インフルエンザウイルスは一般的にH1N1豚インフルエンザウイルスと呼ばれている。それは豚や人間、鳥のDNAの混合型であると考えられており、それが最初に発症したのは、2009年4月、メキシコでの事である。それ以来、急速に世界中に蔓延していき、2009年6月には、WHOは豚インフルエンザが世界的流行病(パンデミック)であると公言した。今の所は、H1N1豚インフルエンザウイルスに感染した人は、通常、症状が穏やかにでると考えられているが、現在患っている病がすでにある人は、症状が重なることによって死亡するというケースが今回も出ており、今ある医療技術の状態により、今秋までには、このウイルスがさらに毒性の強いものに突然変異するだろうと考えられている。その結果として、1918年のスペイン風邪の流行並みに、多くの死者を出すのではないかと懸念されている所もあり、世界中の政府はパンフレットや報告書のようなもので、インフルエンザにかかった際の対処方を、かなりのコストをかけることにより幅広く警告してきているが、それと同時に、これまでに使われてきたインフルエンザ用の薬の在庫が山積みになってきてもいる。そんな中、今回のウイルス拡大をなんとか防ごうと、それに似た症状が出た飛行機の乗客が家に近い場所に隔離されたり、学校が休校になってきたりしている。また、メディアは実地調査を続けてきてはいるが、様々なプロパガンダも流される中で、何が真実で、何が嘘かを見分け、それらを考察することは、ますます困難になってきている。また、面白いことに、一部の恐怖を煽る人たちを除いて、今ここ英国にいるほとんどの人々は、この伝染病のこれからの行方について、かなり落ちついて考えており、そういう考えに至っているのも、過去10年の間に、恐ろしい、鳥インフルエンザや、サーズ(SARS)など、2大ウイルス感染症を経験してきたからなのだろうか、これらの伝染病は、予想されていたように、大流行して多くの犠牲者を出すようなことはなかったので。人々はH1N1が今回の豚インフルエンザと、過去の2つの流行病他のものと異なるという確信が持てないでいるからなのであろう。
■ワクチン(The vaccine)
すでにH1N1ブタインフルのためのワクチンを開発する競争が始まっている。すでに世界の製薬大手はWHOとパンデミックワクチンの製造について合意を得た。英国の製薬会社もこのレースに参加しており、英国市場へ供給するために大量の注文を受けている。一般供給用にある大手製薬会社が最初にこのワクチンを発売することになりそうだ。
どうしてこの大手製薬会社のこの特許、すなわち"split influenza vaccine"とアジュバント(抗体をつくるためにワクチンにいれられるもの)を2005年に申請していたのか、ここの1つの疑問が残るが、奇妙な一致として、2009年2月、豚インフルが明らかになる2ケ月前にその特許が成立したこともあげられる。さらに、現在の豚インフルの流行は、鳥インフルのH5N1、豚インフルのH1N1、人インフルのH3N2をかけあわせた"split influenza virus"であることも特筆される。2009年4月30日の“Nature”誌によると、インフルエンザのウイルス学者のRobert Webster氏は、「この豚インフルがどうやって、これらのすべての遺伝子を獲得したかは分からない。」自然界の気まぐれなのか、実は実験室でつくられたのではないか、または他にこれを説明できる原因が明らかになるのか。このことが明らかになるには、流行の後、何年も後になってからになるかもしれない。しかし、歴史はこの性急に用意された予防接種の危険性について教えてくれるだろう。
■ギランバレー症候群の災厄(The Guillain--Barre
disaster)
1976年2月に、Fort Dix 米陸軍基地で豚インフルの流行が始まり、19歳の兵士が死亡した。そして、数百人の健康な兵士が感染した。この疫病が全米に広がることを恐れて、ジェラルド・フォード アメリカ大統領は費用にして1.35億USドル(現在の価値にして5億ドル)を使い、大衆への予防接種プログラムを実施した。10月にはワクチンが開発され、予防接種が開始された。その結果は悲劇的なものだった。予防接種をした多くの方が重篤で時に致命的な副作用にさいなまれたのだ。
予防接種が始まって3週間で接種と関連のある41名の死亡が記録された。そしてさらに悪名高い副作用が神経筋肉麻痺のギランバレー症候群であった。500人がかかり、25人が死亡した。そして、アメリカ政府は、1976年12月には、国のインフルエンザ予防接種プログラムを撤回しなければならなくなった。実際には1人の死亡者しか出さなかったウイルスから人々を守るために、その時には4000万人の米国民に接種が行われたが、豚インフルエンザの傾向はなかったが53人が死亡、500人以上が入院することになったからである。そして、17億ドル(当時の価値で数千億円)の損害賠償費用がこの大失敗にかかったのだ。
その結果、この大失敗に学び、アメリカの法律は改正され、ワクチン製造メーカーは、将来の損害賠償を免責になったのだ。
●スクアレン(Squalenes)
ある製薬会社大手は最近、あの安全性に問題の炭そ菌ワクチンのメーカーであるとともに抗体値を高めるために、MF−59という免疫アジュバンド(=ワクチンの効力を増すための補剤)を使っている会社を買収した。
MF−59はスクアレンを含んでいる。多くはサメの肝臓から抽出された天然の炭化水素を含む。そして、接種されると免疫を刺激し。免疫力を高め、身体が必要とするウイルス抗体のレベルを減らす。スクアレンは湾岸戦争症候群をと関係する。そして自己免疫疾患を起こす。これらには、リューマチ性関節炎、多発性硬化症、横断性脊髄炎、心内膜炎、狼瘡などが含まれる。スクアレンを注射すると過度の免疫が反応し、不可逆性の自己免疫疾患が起こる。そして、この大手製薬会社が豚インフルワクチンに好んで使うスクアレンのアジュバンドがMF59なのだ。他のアジュバンドが使われようと、スクアレンを含むようになるのだ。この物質は公衆の健康に重大なリスクを与えることが証明されている。そして、この危険なワクチンを最初に受けるのは子どもたちになるであろう。アメリカでは季節性のインフルエンザで毎年100名の子どもがなくなるが現在の型であれば、豚インフルは季節性のインフルエンザと同じ程度のリスクであり、100名程度は犠牲になると思われる。この予防接種のプログラムは何百万人もの子どもたちをターゲットにしていて、もし1976年の大失敗の時のような副作用が出るとすると、豚インフルにより死亡する以上の子どもたちが、予防接種によって死亡するのである。そして数え切れないほどの人たちが永久の副作用にさいなまれるのである。そして、大人も予防接種のリスクにさらされるのである。秋には供給が始まるというのに、基本的な安全性確認や、手続きさえも見送られているのだ。
これは、まったく発生しないかもしれない豚インフルエンザの流行を阻止するために作られ、試したこともなく、安全性も確かめられていないワクチンによって、現代の医療災害が作り出されるのであろうかとの疑問もわいてくる。
■ホメオパシーの役割(Homeopathy’s role)
現状では、豚インフルエンザは、毎年数千人単位で死者をだしている季節性のインフルエンザとは、なんら変わり無い危険度であるようなのだが、豚インフルに関連する被害妄想というのは、まだ根強く残っている。
しかしながら、われわれはホメオパスのように、どのウイルスであるかという事にとらわれる必要はなく、季節性のインフルエンザで苦しんでいる人と同じように、豚インフルエンザで苦しんでいる人にも同じような方法でアプローチしていけばよく、まず、最初にすべきは、患者の症状を明らかにすることであり、その次のステップとして、その対処法や処方について注目していけばよい。1918年のスペイン風邪の流行に関するホメオパシーの成功は、よく知られており、特にアメリカでは有名であり、また、同国内にある複数の病院に存在する記録書の中には、継続的にアロパシー的な療法をした際の死亡率は28%、同じようにホメオパシー的なアプローチをした際には1%を若干上回る程度のものであったと記述されている。アメリカでのスペイン風邪の発生に対するホメオパシーの有効性についてのより詳しい詳細については、アメリカホメオパシー協会のジャーナルへの「インフルエンザとホメオパシー 50の証言」と呼ばれる、WA.ディウェイ医師ホメオパスが書いたレポートの中に記載されている。また、この流行において、もっともよく効力を発揮したのはジェルセミュームとブライオニアの二つのレメディーであったようだ。
■わたしたちは何を準備すればよいか(Preparing ouselves)
2009年8月6日のレポートによると、英国での豚インフルへの感染は減少傾向になった。しかし、この秋にインフルエンザがもし流行った場合、私たちはその負荷に対応する余裕がないため、流行に備えて、私たちは協力して、この流行病に対しての「genus epidemicus(もっとも効果的なレメディー)」を特定する必要がある。個々のクライアントの詳細な病歴をケーステイクしている暇がないだろうから、根本体質に基づいたレメディーの出し方より、さらにセラピューティック(実践治療的)な対応が重要となる。私たちは、すぐにレメディーを特定し、他のレメディーと区別できるように、頻繁に使うレメディーを完璧に覚えていなければならない。病気の進行の経過を辿り、将来において参照できる証拠となるように、上手に記録することが不可欠となる。
豚インフルのノゾースも入手できれば、その人の感染への免疫力を上げるので、予防レメディーとして使えるだろう。また、介入レメディーとしても有効である。
現段階では、どのレメディーが最も成功するかを判断するには時期尚早(通常の風邪と熱のレメディーを除いて)だが、現在まででは、アーセニカムとバプテジア、パイロジェン、オスシロコチニュームの200Cのコンビネーションが、効果があがっている。私たちはホメオパシーが公衆の健康に有益な形で実質的に貢献できる強力な手段であることを知っている。これからインフルエンザの流行が本格的になったにせよ、私たちホメオパスは、患者に対して、やさしく、安全に、効果的に対処を行う選択肢を提供するツールがあることに自信をもつことができる。 |