統合医療プロジェクトへの軌跡
日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)理事一同


このたびは、テレビや新聞などで、統合医療の検討が開始されるという報道を耳にしたり、ホメオパシー療法という言葉に触れられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

2月15日付のテレビ朝日系 お昼のニュースバラエティー番組「スクランブル」の 夕刊早読みコーナーでは、「夕刊フジ」に掲載された「鳩山由紀夫首相のツルの一声で、厚生労働省は瞑想や催眠療法といった民間医療に加え、チベット医学、ホメオパシーなどの世界各国の伝統医学の保険適用や資格制度化をマジメに考え始めた。」 という紙面が、テレビに大きく映し出されました。

ホメオパシーとは、日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)由井寅子会長が講演会「症状はありがたい」で話しているとおり、現代医学とは異なる独自の体系をもっており、生きもの本来の自己治癒力を活性化させ、自分自身の力で治癒を導く療法で、200年の歴史があります。

日本では、1996年に英国で日本人初の認定ホメオパスとなった由井会長が、ホメオパシーを日本に導入しました。1998年4月に日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)が発足、2005年にはホメオパシー職業保険が適用されるようになったことで、ホメオパスが職業として活動できるようになりました。現在、JPHMA認定を受けたホメオパスは全国に約500人、とらのこ会員は3万人、そして日本でホメオパシーのレメディーを利用している方々は10万人におよぶ勢いをみせています。これはとらこ先生が、日本にホメオパシーが普及することを願って、日夜さまざまな種をまき続けた結果です。

臨床では、現代医学では治癒することができない難治の症例が、ホメオパシーによって数多く治癒されています。この成果は日本国内だけでなく、海外でもホメオパシー協会(ICH:ホメオパシー国際評議会)などによって大きく取り上げられ、由井寅子ホメオパシー博士のホメオパシー療法による治癒率の高さは他に類を見ないものと激賞され、注目を浴びています。日本における急速なホメオパシーの普及と発展に対する貢献にも、驚きとともに称賛の声が上がっています。

ホメオパスの質的向上をめざして毎年行われてきた年次学術大会も年々充実度を増し、昨年2009年の第10回日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)コングレス(学術大会)では、ホメオパスや学生に加えて一般の方々にも参加いただける形態で、連日850人を超える方々が参集し、合計100を超える症例発表や学術発表が行われました。これらは、ホメオパシーの専門知識をしっかり学んだプロのホメオパスの成果の実証にほかなりません。

さて、日本ホメオパシー医学会(JPSH)では、「ホメオパシーは医師、歯科医師、獣医師、薬剤師のみが行うもの」と表明し、一般の向けのセミナーで「医師以外の者がホメオパシーを行うことは危険である」ということを常にお話しされています。これは、英国国会で最も安全な代替療法と認められたホメオパシーを日本国民から遠ざけることにもなる不適切な発言だと考えます。

また、一般向けセミナーでは「レメディーはプルービングがあるので、一般の人が扱うには危険である」ともいっています。実際、初期のハーネマンは、希釈度が低く原物質の残っているものを使ってプルービングを行っていた時代があるので、その時は原物質の毒物によってプルービングが起こるという危険性もあったでしょう。しかし200年たった今日、原物質のないレベルまで高度に希釈されたレメディーを使用しているので、自己治癒力を活性化させるだけでプルービング自体が危ないということはありません。逆に、熱や発疹、下痢などの排出をクスリで抑えることの方が人体には危険です。

同じく一般向けセミナーでは、「皮膚から症状が出ることは、アグロベーション(悪化)であり、ホメオパスが下手なために起こるもので、その場合は医師による治療を受けるべきである」とも言っています。

レメディーによって自己治癒力が触発され、皮膚から老廃物が排出されるのは、今まで多くのホメオパスが経験しているもので、治癒に至るための体の大切な営みです。 こういったホメオパシー医学の基本部分の理解がないまま、レメディーによってより発疹が出たらステロイドなどのクスリで抑圧するという認識をもった方が、一般向けにセミナーを行っていることは、とても残念なことだと思います。

また、同医学会の理事の方が参加され、昨年11月に行われた日本統合医療学会の抄録集に、以下のように書かれています。

「最近、わが国でもその認識度が高まりつつあるが、ホメオパシーに対してはまだ規制がなく、医療資格のないホメオパスが存在していることが大きな問題である。病気の治療は医師、歯科医師、獣医師にのみ認められている医療行為であり、病気を知らない無資格者が行うにはあまりに危険です。その意味でわが国で信頼できるホメオパシー団体は「ホメオパシー医学会」のみである。なぜなら日本ホメオパシー医学会は、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師のみによって構成されているわが国唯一の団体だからである。研修コース(第9期は2009年10月からスタート)を設け、ホメオパシー習得を希望される諸氏は日本ホメオパシー医学会の研修コースを履修されたい。日本ホメオパシー医学会では、ホメオパシーを有効かつ安全に実施するために“ホメオパシーは医療行為である”ということをわが国にも認めていただきたく今後も働きかけていく所存である。」

しかし、皆さん、まず医療行為とは何でしょうか? 医師法17条には、「医師でなければ、医業をなしてはならない。」とあり、この解釈は「医師法第17条に規定する「医業」とは、当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(「医行為」)を、反復継続する意思をもって行うことである」と説明されています。つまり、患者を診断し、薬を出し、聴診器を使い、必要なときには注射をし、手術などを行う者です。

ところで、日本ホメオパシー医学会の講演などでは、ホメオパシーのレメディーを「ホメオパシー薬」と呼んでいますが、これは正しい表現ではありません。高希釈されて原物質を含まないレメディーは「砂糖玉」であり、日本の法律においては食品であって、医薬品ではありません。医薬品と誤解されるような表現を使うことの方が問題なのであり、食品としての法律を遵守していれば薬事法上の問題もありません。

ホメオパシーと現代医学は全く異なる療法です。医師であるからといって、さまざまな療法の専門課程を学ばず片手間に行うことが、果たして安全といえるでしょうか。 まして、医師のホメオパシー学校では、年間1週間程度の受講だけで、後は実践を通じて経験を積むものとなっていますが、この程度のボリュームでは、プロフェッショナルとして必要なホメオパシー医学の基本と専門性の習得はとても難しいと言わざるを得ません。

また、日本からも海外のホメオパス認定試験を受験することができるため、海外のホメオパス認定資格だけで、職業保険もなしに日本国内でホメオパスとして活動している方もおられます。しかし、人の心と体を扱うホメオパスは、その国の職業保険を有するホメオパス団体に所属し規律を遵守して活動することが、ホメオパシー療法を受ける国民に対しての最低限のモラルであると考えます。

JPHMAが認定するホメオパス養成教育機関では、ホメオパシーの専門教育を学ぶために、必要な時間を割き学んでいただいています。この5月から新しく開校するホメオパシー統合医療専門校「カレッジ・オブ・ホリスティック・ホメオパシー(CHhom)」では、これまで以上にカリキュラムも充実し、従来の欧州のホメオパシー専門教育課程の3倍近い、専門学校並みの時間数を学びます。その中には、ホメオパシー学習に加え、現代医学の解剖・生理・病理のカリキュラムも組まれています。

由井会長は、日本ホメオパシー医学協会(JPHMA)の会長でもありますが、JPHMAの規約では「医師でも、助産師でも、美容師でも、主婦でも、会社員でも、ホメオパシーを学ぶ意欲を持ち、ホメオパシーの専門課程をしっかりと学び、認定機関の試験に通った者が、ホメオパスとして活動する」となっています。

今回の政府の統合医療プロジェクトですが、医師が働きかけることによって、彼らの一方的な言い分が通ることになって、ホメオパシーをはじめカイロプラクティック、ヨガ、音楽療法などが医師だけに許された療法となってしまうことは、専門性に欠け、本来の望ましい形からはかけ離れてしまうと思います。 また、別の現役で統合医療に取り組まれている医師は、このように言っています。

「医師であるからといって、医師が誰でも簡単にホメオパシー治療ができるような体制は危険である。医師でも、ホメオパシーによる治療を行う場合は、定められた教育課程を習得する必要があると考える。漢方薬が保険適応されて以来、東洋医学の基礎である証の知識ももたない医師が、対症療法的に漢方薬を大量に使用している。風邪に葛根湯、肝炎に小柴胡湯というような、西洋医学的発想で漢方薬を乱用しているため、漢方薬の有効性が発揮されず、膨大な医療費を無駄使いしている。さらに副作用被害まで起こしているのである。漢方の基礎医学を理解している薬剤師の処方の方がよほど的確である。このような轍を再び踏んではならない。ホメオパシーの効果を現在の医療体制の中で有効に発揮しようとすれば、ホメオパスの教育体制の確立が急務である。」

ホメオパシー療法がどのように学ばれるべきか、誰がホメオパシー療法を行うべきかを、皆さんにも考えていただきたいと思います。医師だけがホメオパシーを行うことになれば、一般家庭でホメオパシーキットが使用できなくなる可能性も考えられるのです。

また、ICH (ホメオパシー国際評議会)レベルのホメオパシー教育を受けることなく、ホメオパシー職業保険にも属さずに第三者にホメオパシー療法を行っているという、“自称ホメオパス”と呼ばれる人がいるという状況もあります。こういった実態は、ホメオパスという職務を担う者の実力に大きな差を生み出すことになり、ホメオパスの公的な職業資格確立の障害となっていくことはぬぐえません。

日本でホメオパシー職業保険を有するJPHMAでは、そういった職業保険に属さずホメオパシー療法を行っている自称ホメオパスの方々を含めすべての方に認定試験の門戸を開いていること、また適正能力に達しない方には、それを補うためのプログラムも用意していることを、厚労省に説明しています。

英国デモの様子
さてここで、英国からの速報をお知らせいたします。2010年2月24日英国時間14:30に、ホメオパシーを支持する人々が”Homoeopathy worked for me.私たちが健康を取り戻すためにホメオパシーが必要です!”を合言葉に、英国国会議事堂( St. Stephens Entrance)に集まりました。ホメオパシーを健康保険適用外にしようとする政治的な動きに反対するホメオパシー支持者たちが、2万5000人分の署名を国会へ提出するために動き出したのです。

ここ最近、英国では、政治的なホメオパシーバッシングが激しさを見せ、ホメオパシーを英国の国民健康保険(NHS)適用外にするという動きが起きています。その理由には、ホメオパシーに反目する医師・製薬会社と、不況続きの中で国の出費を少しでも減らしたい議員たちがつながり、国民にホメオパシーの非有効性を不当に喧伝していることが予想されると報道されています。

英国デモの様子デモに参加していた英国のJPHMA理事の報告では、旗を持ってホメオパシーの有効性を示す人たちは、ホメオパスの参加もさることながら、ホメオパシーで治癒したクライアントさんたちが多かったことに驚いたということです。

大きな旗の反対側を持ってくれていた男性は、ホメオパシー批判のニュースをテレビで見て、「自分はホメオパシーで実際に健康になった。ホメオパシーがなくなるのではないかと危機感を感じて、自分にもできることが何かないかとロイヤル・ロンドン・ホメオパシック・ホスピタルへ連絡したら、本日のデモを紹介され、参加した」と言っていたそうです。

集まった多くがホメオパスだけでなく、ホメオパシーによって治癒した一般の人たちであったこと、彼らがホメオパシーを守ろうと自ら集まっているということが非常に心強く感じられ、ホメオパシーが英国国民に恩恵を与えてきたんだということを実感したということです。そこに集まった彼らたちこそが、ホメオパシーの効果を証明するエビデンスにほかならないのです。彼ら、そして私たちの思いが通じて、ホメオパシーが英国で今後も人々に広く使われていくことを強く望みます。

このように、国民の強い意志と運動が国を動かす力となるのです。いま、日本の皆さんにご協力いただいている“ホメオパシーYES”の署名活動も、これからの日本にホメオパシーが普及していく上で、とても重要な活動になります。

ぜひ、ホメオパシーを活用しているみなさんの体験を“ホメオパシーYES”として積み重ねていただく、ご協力をお願いたします。